まだ観光客として京都を訪れていた頃に、錦市場を着物で歩くというのが憬れでした。着物あるきで市場の食材を買う、豆を買う、それと同じくらい『有次(ありつぐ)』で買い物をすることは、粋なことに思えました。

何回入ったかなぁ‥‥。ピカピカの銅鍋、鋭く研がれた包丁類、‥‥頑張れば買えるのだろうけど、まだ私ごときの腕前で『有次』製をさわるのは早いわ、と自分を戒めていた感がありました。

これまで何度も訊かれました。
「有次はどのあたりですか?」「Do you know ARITSUGU ?」そう、『有次』は京都人のみならず、国内外~遠来の人々が目指して行く店なのです。

ショーウインドゥ越しに見た鍋や道具類‥‥ 「今日こそ、有次で何か買う」と思って中に入りました。いい歳をしてなんですが、それは一歩、大人への階段を上がることのように思えました。

店内中央部には刃物類。包丁、ペティナイフなどがズラリと鎮座しています。壁面には銅鍋、アルミの鍋、おろし金や、栓抜きや、いろいろな調理器具が並んでいます。

店の中を2周もしたら、おおかた買いたいものの目星がついて‥‥ 職人さんの手仕事を少し見て、写真も撮らせていただきました。

この度、買ったのはこの二つ。
バレンタインデーを意識して ♡ の型抜き。豆を茹でるときの必需品、網じゃくし。型抜きは、」店員さんに相談して「中」のサイズにしました。
「人参とか抜くのであれば『大』では大きすぎますよ。濡れたままにすると緑青が付くから、洗ったら拭いてくださいね」とアドバイスをいただき、「やっぱり、有次!」と思いました。

だって、100均の道具で緑青なんて有り得ませんから。しかも、型抜きにはちゃんと『有次』の文字が刻まれています。

これで人参を抜くかどうかは置いといて‥‥ 私もついに『有次』入門が叶いました。(^^)
次回はちゃんと寸法を確認した上で、かっこ良く刻印のある木製のなべ蓋を‥‥

かつお節削り器、銅の卸金、小ぶりなゆきひら鍋など、一段上がれば、また一段。欲しい物が浮んできます。

良かった。もし今も私が観光客だったら、上洛の度に一つずつ「記念に」と何かを求め続けたことでしょう。『有次』その危険な響きは、日本人ならずとも欧米の方々にも刺さるようです。店内では、流暢な英語で接客が行われていました。

京都・錦市場を錦天満宮側(kyo・miori や髙島屋に近い方)から入っていくと、最初の道(御幸町通)を過ぎた右側です。
料理人さんや料理好きな人たちが、博物館の展示を見るような目で道具類に見入っておられるのが印象的でした。

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■有次 錦店 kyo・mori 本店より徒歩4~5分
京都市中京区錦小路通御幸町西入鍛冶屋町219 TEL 075-221-1091
9:00~17:30 休みは正月三ヶ日
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有 次
永禄3年、藤原有次が鍛冶職を始め、京都御所御用鍛冶として、禁裏の命を受け長く出入りする。泰平の世と共に需要の多くなった佛師用小刀の鍛造を始め、明治頃より、現在の料理庖丁及び、料理道具へと展開した。400余年の間、代々「心根」の入った手造品を送り出し続けている。(情報誌 京都 第39号 Web より転載)